◆コロナ禍のイギリス5月レポート 成人約75%が一回目ワクチン接種完了、対象者は30歳以上まで拡大

 

 

                                              ボッティング大田 朋子

 

先月4月のイギリス発コラムでは、新型コロナウィルスワクチン接種対象が42歳まで下がってきたと述べたが、その後もイギリスのワクチン接種プログラムは驚異的なスピードで進んでいる。本記事を執筆している5月末の時点で、全成人の72%以上は1回目の接種を終え、そのうち40%は2回目の接種も完了した。

ワクチン接種の優先順位となる対象年齢も順調に引き下げられていて、現在は30歳以上まで接種対象者が拡大、イギリス政府が当初掲げた「7月末までに全成人が1回目の接種を終える」目標も、このままいけば予定を前倒しする嬉しいおまけつきで達成しそうだ。

【参照:4月イギリスコロナレポート https://bit.ly/3fLgOaS 】

 

何をかくそう筆者も5月の第1週にアストロゼネカ製ワクチンを接種し終えた。

すでに一回目のワクチン接種を終えていた友達たちから経験者ならではの体験を山盛り聞いていたので、安心して接種に臨めたと思う。

 

多少余計なお世話ではあるが、ここでは先だって接種した友人たちから聞いた体験談のなかで知っていてよかったと思うことを紹介したい。

これから接種する誰かの参考になるかもしれないとの期待を込めて……。

 

・利き腕ではない腕への接種がお薦め

ワクチン接種にあたって前もって知っていてよかったことの一つは、「注射した部分が痛くなるケースがあるから利き手ではない腕に接種してもらうのがお薦め」というアドバイスだ。これは他の予防接種にも当てはまるのかもしれないが、個人的には一番役に立った勧告だった。というのも、わたしもワクチン接種の翌日中は接種部分に痛みがあったが、痛みが利き腕と逆の腕だったおかげで使わずにすみ非常に助かった。同様の理由で、横向きの姿勢で寝る人は、上側になる方の腕に接種してもらうと後々痛みを感じることが減るかもしれない。ちなみに接種する腕は右でも左でもどちらでもよいらしい。

 

・悪寒対策

二つ目は、接種した日の夜や翌日に悪寒を感じたという話を数人から聞いていたから、接種当日の夜は湯たんぽを用意して床に就いたことだ。湯たんぽのおかげで副作用として起こりうる悪寒がなかった訳ではないかもしれないが、筆者がワクチン接種した5月頭はイギリスではまだ肌寒かったこともあり、湯たんぽで体を温めたおかげでぐっすり眠れたのがよかった。

 

湯たんぽを使って悪寒対策というのは暑苦しい時期に接種する人にはこれはあまり役に立たない助言かもしれないが、接種当日の夜にできるだけ気持ちよく就寝できる環境を整えておく重要性は侮れない。

 

蛇足だが、寒い季節に接種する場合は、着脱が簡単な衣類で接種に向かうことをお薦めする。接種の際に腕をまくりあげるが、厚着だとその時に腕の血行が圧迫されてしんどいからだ。筆者も、自分的には薄着で行ったつもりだったが、それでもセーターをまくり上げると圧迫され結局セーターを脱いで打つことに。寒い日に注射を打つ時はカーディガンやストールなど接種後すぐに羽織れる衣服を重ね着して行くべきだと学んだ。

 

・数日間寝込むことを想定して準備を!

接種してから数日の間は疲労感を強く感じたり頭痛や筋肉痛があった友達が何人もいたので、「1週間家を空ける」くらいの勢いで思いつく限りの準備をしていったこともやってよかったことだ。一人暮らしの人なら、しんどいときの自分が食べたいだろう料理を数日分用意しておけば後々助かるかもしれない。筆者の場合は、家族分の料理を数日分作り置きしておき、洗濯や子どもたちの制服のアイロンがけといったことを前日に終えておいた。冷凍食品や半調理食材なども買い置きし、子どもたちの学校への送迎も接種した週は旦那にお願いしておいた。

まさに1週間家出するかの勢いだ!

 

……と、そこまで準備をしたのに、実際は接種した次の日に少し体がだるかっただけで体調は元に戻ったのでそこまで周到な下準備は不要だったのだが。とはいえ「万一副作用がひどくても家族(特に子どもの生活)への影響が最小限で、心置きなく休んで大丈夫」という安心感があったことはよかった。副作用の強弱は打ってみないとわからないのだから「転ばぬ先の杖」が大事かなあと思う。

 

・5月17日からさらなるコロナ規制緩和

イギリス全体のコロナの近況でいえば、インドで特定された変異株の感染拡大への懸念が広がっているが、5月17日からはイギリス政府が示すロックダウン段階的解除の「ステップ3」に進むことができた。それにより、ようやくレストランやパブなどで店内飲食が再開されて、屋内施設で6人までの集りが可能となった(それまでは屋外でしか会えなかった)。2世帯が自宅で過ごすことも許可されたので、何か月ぶりかに友達を家に招き入れられるようになった。というわけで、インド型の変異種への懸念はあり引き続き警戒が必要だけれど、少しずつながら社会生活を取り戻しつつあると感じている。

 

次に気になるのは海外渡航だが、新型コロナウイルス対策の一環で原則禁止だった海外旅行が、5月17日以降は条件付きで可能になった。海外旅行の渡航先ごとに「信号システム」が導入され、渡航先の国々をグリーン、アンバー、レッドと3つのリストに分類、それぞれの国・地域からイングランドへ入国する際のルールが提示された。

 

日本は今のところ「アンバー」扱い、つまり日本からイギリスへ来るにはコロナ陰性証明の提示、到着後10日間の自己隔離、到着から2日目と8日目のコロナテストの実施、乗客追跡フォームの記入といった制約条件が課されている。

というわけで、まだまだ自由に旅行ができる状況ではないというのが正直なところだが、それでも確実に状況は良い方に向かっていると思う。個人的には、早く日本が「グリーン」になって、自主隔離をせずにイギリスと行き来できるようになってほしいと日々祈っている。

 

・最後に

 今回のコラムではこれから新型コロナウィルスワクチンを打つ人に参考にしていただけるかもと筆者のワクチン接種体験談をシェアしたが、ワクチン接種に関してはそれぞれがそれぞれの理由で接種するかしないかを決めてしかるべきだという気もちには変わりがないことを付け加えたい。

 

上記のようにイギリスでもインド型の変異種など引き続き見通しがたたない不安な状況には変わりがないが、米ファイザー製と英アストラゼネカ製ともに2回の接種を完了すればインド型変異種にも効果があるという研究結果を信じて、そして去年の今ごろに比べると事態は確実に前進していることに感謝しながら、今日も一人ひとりができることをしていくしかないのだろうと思う。

 


 

ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

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