◆コロナ禍のイギリス10月レポート コロナ共存から3カ月、感染再拡大

                                           

                                              ボッティング大田 朋子

 

・ウィズコロナから3ヶ月後の現在

7月にコロナ関係の国内規制をほぼ撤廃し、世界に先駆けて「コロナとの共生」に駒を進めたイギリス。コロナとの共生生活から約3ヶ月が経った今、日常の様々なところで「ほぼ」通常の生活が戻ってきている。

 

例えば、私ごとでいうと去年は一貫してオンライン開催だったヨガやダンスのレッスンも今は対面に戻っているし、子どもたちの修学旅行やクロスカントリーといった過去2年間できなかった学校行事が9月からは復活した。

 

もちろん、大勢が混じり合うとき、例えば子どもたちでいうとスポーツの試合前にはラテラルフローテスト(30分で結果が出る抗原検査、無料で配布されている)をしてから参加するといった対策をとり、保護者の試合観戦も、屋外の試合に限ってマスクを着用して観戦ができることが多くなっている。会場となる学校によってはまだ「観戦者なし」というところもあるが、全く他校との試合や学年が違う子どもがまじって練習ができなかった去年の今頃を思うとかなり通常に戻っているといえる。

 

知人のなかにはまだ大勢で集まることや、お酒が入る席に同席することに抵抗がある人もいるが、娘の学年の保護者間で飲み会があった時は、保護者同士の提案で飲み会の前日にラテラルフローテストをしてから集合しようという話になり、それこそコロナとともに生きる姿勢が根付いてきていると感じた。

 

・新規感染者5万人越え、ワクチン頼みどこまで?

と、あたかもコロナとの共生が上手くいっているような書き方をしたが、実情でいうとニュースでご存じの方も多いように、イギリスでは再び恐ろしい数の感染者数を記録している。

 

10月に入ってから新規感染者が再び急増し10月中旬には1週間連続で新規感染者数が4万人越え、1日あたりの死者数が200人に達した。10月21日には、今年3月以来初めて再び新規感染者が5万人を越えてしまった。

 

とはいえ、同じように新規感染者が4万人を超えていた今年1月と比べると、入院患者は2割ほどに抑えられているので、住んでいる私たちの危機感は薄いし、感染者が増加しているからといって行動制限をしよういう意識も低い気がする。

 

10月中旬からの再度の感染拡大を受けて、例えばボランティアに参加する際の規制が強化されたり、働き方も再びフレキシブルになったりしている。パンデミック中の1年半の間在宅勤務をしていた大手銀行で働く友人は9月から週一出勤になり10月からは週2回出勤になったと話していたが(他の日は在宅勤務)、10月中旬以降は再び、コロナ感染を不安に思う場合は週一出勤でよいとの判断が下されたと話していた。

 

・イギリスのワクチン信仰

現在のイギリスでは、ワクチン接種が可能な12歳以上の8割以上が2回目の接種を終えていて、50代以上にはブースター(追加)接種が進められている最中だ。

 

筆者の周りだけを見ると、驚くほどワクチン接種が迅速に進んでいた去年12月から春過ぎまでの当初のワクチン接種のスピードに比べると、追加接種は鈍足に進んでいる印象を受けるが、NHSが発表するデータによるとすでに50代以上の半分以上に当たる610万人が追加ワクチン、ブースター接種を受けたらしい。

 

デルタ株が増え続ける真っ最中の7月に、イギリスがコロナに関してのほぼ全ての国内規制を解除し、国民もそれを後押ししたのは「ワクチン接種が進んでいたから」だが、現在もイギリス政府の姿勢は変わらず、再び新規感染者数が増加していても追加対策は課さずあくまでワクチン頼み、ブースター接種を推し進めることで乗り越えようとしている。

 

「ワクチンのおかげで重症患者や入院患者は低い数字で抑えられるから、感染者数には動じない」というイギリス政府のワクチン頼みの戦略がどこまで通用するのか、この冬が正念場だ。

 

・マスク?ノーマスク?プランB?

規制なしでウィズコロナを進める現在のコロナ政策をイギリスでは「プランA」と呼び、7月の規制撤廃以来ウィズコロナの道を選んだイギリスがとっている政策だ。

 

一方で現在の感染拡大を受け、野党や専門家からいち早く導入すべきだと声が上がっているのが、(1)マスクの義務化、(2)ワクチンパスポートの導入、(3)可能な限り在宅勤務を推奨する「プランB」だ。

 

個人的には、再度のロックダウンや学校閉鎖といった極端な対策に走ることを防げるならば、屋内や大人数で集合する際にマスクを着用することやソーシャルディスタンスをとることくらい大したことない我慢に思うので、手遅れになる前に「プランB」を導入して慎重にウィズコロナを進めてほしい気もするが、それに懐疑的な意見も多い。

 

マスク着用も「マスクかノーマスクか?」と議論が続いて入るが、マスクの着用をはじめとするコロナ対策は政府が義務として課すものではなく、個人の責任に委ねられるべきという考え方が強く、その根底にある「個人の自由を尊重」に賛同する意見が強い。

 

幸いにも1日の新規感染者が5万人を超えた10月21日以降は、再び感染者数が一日約3万5000人と減少に向かっていることもあって、プランBがすぐに取られる様子はなさそうだが、コロナとインフルエンザ両方と戦う初めての冬はすぐそこまでやってきている。今年の冬の成り行きを、追加接種の進行とともに見守りたい。

 


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

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