ボッティング大田朋子
不調が続く更年期世代
今回は更年期障害が仕事に与える影響、その対処法について書きたいと思います。
手のひらや足先が非常に熱くなってほてったかと思うと腰や手足はすごく冷えていたり、わけもなくイライラしたり、朝起きた瞬間からしんどかったりとプレ更年期や更年期の体や心の不調は経験した人ならわかりますが、本当にツライですよね。
更年期障害といわれる症状やその程度は千差万別だし個人差も大きくて感じ方も人それぞれ。「更年期なんて全く感じなかった」という非常にラッキーな人もいますが、それでも女性の9割が更年期にまつわる何らかの不調を感じると言われています。英国では更年期症状が仕事にネガティブな影響を与えたと感じている女性は63%というデータや、更年期症状が原因で離職した女性は10人に1人という報告も出ていて、更年期専門が原因で昇進の機会を逃したり労働時間を減らしたりするといった影響も報告されています。病気ではないから軽く見られがちですが心身ともに苦しんでいる人たちが多いのも事実。家族のなかでも役割が大きくて、ビジネス面でも重要な役割を果たしている40代から50代の女性たちが直面する問題だけに、男女や年代問わず理解を深めて、もっと適切な知識やサポートが広がってほしい領域でもあります。
・意外と知られていない「プレ更年期がしんどい」
更年期に限らず、閉経前の「プレ更年期」にしんどい症状が出る人もけっこういて、「更年期障害による不調は閉経前の2年間が一番顕著」という報告もあるほど。プレ更年期にしても本格的な更年期にしても年代的に子育てや仕事に追われて何かと疲れがたまりやすい年代でもあり、体や心の不調がただの疲れによるものか更年期症状として起こっているのかを判断するのが難しいのですが、(プレ)更年期障害は多くの女性が経験する可能性のある生理的な変化、気になる人は「プレ更年期チェックリスト」や「簡易更年期指数 (SMI)」などのチェックリストを使ってまずはセルフチェックしてみてください。
・生活習慣を見直す時期
更年期の「更」は「あたらしくなる。あらたまる。かわる。」という意味がありますが、その漢字の通りこの時期は更年期にともなうツライ症状をやわらげたいと食事や睡眠を見直したり、筋肉アップにつながる運動を始めたり、ストレスを減らしたいと気持ちの持ち方を変えてみたりと、何かと日常生活を振り返って生活改善をする機会になります。そして生活習慣を見直してもまだ症状がしんどい場合は、サプリメントや漢方を取り入れたり、ホルモン補充療法をしたりと自身の症状やしんどさに応じた対策が求められます。
筆者の場合は40代半ば頃体がだるい日が増えて手足の冷え、腰の痛さや気分のムレ、集中力の散漫・欠如といった症状が際立ってきました。食事もバランスよくとっていて毎日ウォーキングやヨガをして体も動かしているし大きなストレスもないと認識していたのですがプチ不調が続きました。不調ながらもなんとか乗り切っていたのですが(気が付けば数年も!)寝汗で夜中に何度も目が覚めることが続いたときに、何か別の対策が必要だと痛感して医者に行きました。
・ホルモン補充療法
結果HRT(Hormone Replacement Therapyの略)と呼ばれるホルモン補充療法を始めました。20年以上風邪や頭痛があっても薬を飲まずに治してきたので薬に頼ることに始めは抵抗がありましたが、色々な本や最近の文献を読んでホルモン補充治療のリスクとベネフィットを比較したところ、今のわたしには起こりうるかもしれないリスクよりも今の現状を改善できるベネフィットの方が断然多いと判断しました。
「体も気持ちもしんどいながらなんとかやってきた」という数年間を過ごした後だったので、この生活がこの後どれだけ続くかわからないのなら、という絶望に似た思いもあったし、「クオリティーオブライフ」に目を向ける大切さにも気が付きました。
HRTはクリーム、ジェル、スプレー、内服薬などがいくつも種類があると言われました。私の場合は子宮がありまだ不規則に生理があるので、ジェルの形でエストロゲンを肌経由で取り入れて1ヶ月の半分(12〜14日間)はプロゲステロンのカプセルを飲用する方法を薦められました。具体的には、お風呂上りに腕か太ももの内側にエストロゲンのジェルを塗って、就寝前にプロゲステロンのカプセルを飲用しました。
でも、服用し始めて2日目の夜にプロゲステロンのカプセルを飲んだ後に下腹部が膨らみそれが夜通し続く副作用が起こったので翌朝医療機関に電話をしたら「副作用が出る時は服用をやめるように」と言われ、その日の診察でカプセル飲用からパッチ(貼り薬)に変えたらどうかと提言されました。「プロゲステロンに敏感なのかもしれないし口径薬が合わないのかもしれないし、わからないけど、プロゲステロンも皮膚経由で摂取するやり方を試してみたら」とのことで、納得しました。
パッチの場合は2週間はエストロゲンのみの貼り薬、次の2週間はエストロゲンとプロゲステロンが入っている貼り薬を交代で貼ります。お風呂上りにおしりや腰にパッチを貼り(毎回貼る場所を変える必要があります)週に2回貼り換えます。夜中に汗をかいて起きることがなくなったので夜通し眠れるようになったことがすぐに表れた効果、ふくらはぎのむくみや頭痛、体のだるさなどに関してはしばらくは際立って体調が良くなったと言えるほどの変化はないのですが、気になるほどの副作用もないのでしばらく続けて様子を見ている最中です。ちなみに医者に貼り薬でHRTを服用する「悪い点」を聞いたら、人によっては肌がかぶれたりすることや、ジェルやクリームと違って投与量の調整に融通がきかないことだと言っていました。
ちなみにお風呂の後でもパッチは全然剥がれません。ホルモン補充のパッチを貼った私が入浴した後に家族が同じ湯船に浸かっても安全なのかも気になりましたが、「家族が同じ湯船に入っても健康上の問題を引き起こす可能性は低いと考えられる」というのが医師の答えでした。ベルト周りなど衣服と擦れることが多い箇所や体の前側にパッチを貼るとかゆみが出た時があったので、貼る箇所も毎回経過を観察して自分に合う場所を見つけています。
・タンパク質と果物摂取
ちなみに、プレ更年期症状がひどくなってきてから生活を見直したなかで、更年期障害に効き目があったことはタンパク質の摂取を増やしたことです。それまでもバランスよい食事はしていたつもりでしたが、一人で済ませるランチは簡単なもの(麺類のような炭水化物中心)だったのでタンパク質を食事の中心にしました。それにこの数年は「インターミッテント・ファスティング(断続的断食)」をしていたので朝食を食べていなかったのですが、朝食もタンパク質を取るようにしました。タンパク質も植物性が中心だったのが動物性も取るように。タンパク質を積極的に摂取するようになって夜中に汗で目が覚めることがなくなりました。
加えて、果物も毎日食べてビタミンをとるようにしました。買い物に行く度に果物を買っているので果物を食べているつもりでしたが、よくよく見直してみると子どもにあげて自分は食べずに終わっていることも。自分のことは後回しになる「お母さんあるある」がこんなところに!
・リンパマッサージ
毎晩お風呂の後にヨガをしていましたがそこにリンパマッサージを加えました。「リンパマッサージをしたら体調がよくなった」というウォーキング仲間(50代前半)の助言から始めたのですが、ずっとむくんでいたふくらはぎの張りがかなり楽になり体調が目に見えてよくなりました。ツボ押しをしたり午後はコーヒーをやめたり、自律神経を整えるハーブティーを飲んだり、サプリを飲んだりと色々と体調改善を試したなかで、リンパマッサージは更年期障害の緩和にテキメンでした。
・ジャーナリング
「よかった日記」でも「感謝3行」でもなんでもいいと思うのですが、就寝前にその日を振り返るジャーナルを書きだすことが心と頭が整うのに一役買っていると実感しています。しんどい日でもその日のありがとうを3つ書きだしていますが、3日前や1週間前の日記を読み返すと、いかにどうでもいいことでイライラしてたかとか、数日後にはどうでもよいような些細ないことに苛まれていたとかに気がつきやすいのもよいです。ホルモンバランスが不安定だから、頭の整理もおぼつかない時期。自分を苦しめる思考クセがあるかも、という人にはお薦めです。
更年期のことを話せる友達がいることやパートナーの理解やサポートも欠かせないなあと思います。最近は更年期のことを取り上げるメディアも多いし書籍などもたくさん出ていますが、更年期中の人向けだけでなく、更年期中の女性を周りや社会がどう支えられるかといった認識や取り組みがさらに加速してほしいと思います。更年期障害に悩む人たちへの理解やサポートが広がればいいなあと思います。
【参考】
英国更年期学会
ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota
ライター&プロジェクトプロデューサー
アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。
現在イギリス・カンタベリー在住。
メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。
アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。
プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/