ボッティング大田朋子
今回はイギリス人に「落語」に関する興味度合いをインタビューしました。
筆者の周りには日本に(何度も)行ったことがあるイギリス人や、この記事が出る夏休みにイギリスから日本に旅行に行っている友達が何人もいますが、日本に興味がある彼らに日本が誇る伝統文化である落語のことをどれくらい知っているか聞いてみました。
「落語を知っているか?」と聞いたイギリス人の友達の間にはイギリスで空手や柔術といったマーシャルアーツ(martial arts)を習っていたり、英語で俳句を詠んだことがある人たちもいましたが、「落語」のことを知っている人は皆無。そもそも質問する年代やそれぞれの日本の関心分野よって、回答に幅が出る質問ですよね。落語を理解して楽しむにはそれなりの日本語力や文化理解が求められることを考慮すると、筆者の友達たちのように観光目的で来日した人たちが落語に興味があったり、日本滞在の時間が限られている間に落語を見に行くというケースは稀なのかもしれません。
・落語は日本流ストーリー・テリング
ちなみに落語は英語で「Japanese Art of Storytelling」と訳されています。イギリス人の友達にわかりやすく説明するために、イギリスで人気がある「スタンダップ・コメディ(Stand-up comedy)」を引き合いして、「落語は一言でいえば日本流のスタンダップ・コメディのようなもの、なんだけど話をする人は着物を着て、扇子と手拭いを使って、話と一緒に表情や動作を使って物語を作り上げ、聞いている人を物語の世界へ引き込むんだよ。究極の一人芝居といっても過言ではなくて、日本の伝統芸能なんだ。」と説明しました。
イギリスやアメリカで人気のスタンダップ・コメディはコメディアンが1人で舞台に立ち、マイク1本を片手に持って観衆との対話しながらネタを披露していくコメディ、YouTubeなどでおなじみという人も少なくないかもしれません。スタンダップ・コメディはウィットに富んだ「言葉」でジョークを並べ、観客との「対話」をしながら盛り上げていくのが特徴です。スタンダップ・コメディと対比して、噺家が正座をして行う落語を「シットダウン・コメディ」と説明することもあるようで、スタンダップ・コメディでも落語でも話し手が一人でしゃべって観客を魅了し笑わせるという点では同じですよね。
・イギリス人女性落語家
落語を知らないイギリス人に落語の魅力を簡潔に伝えるに、イギリス・リヴァプール出身の女性落語家、ダイアン吉日さんのビデオを見てもらいました。
ダイアン吉日 落語 Rakugo Stories Episode 1 (youtube.com)
ダイアン吉日さんがおっしゃっているように「落語はStory telling!」。ストーリーが主体にあって、座布団に座る噺家さんが扇子や手拭いを使ってそれぞれの登場人物を演じていきますが、なんといっても見どころは一人の落語家が身振りや手ぶり、視線や仕草を変えて複数の登場人物を演じ分けるところですよね。扇子と手拭いの小道具を使って行う描写も見事です。それを見る観客の想像力が一緒になって頭の中で物語が出来上がっていくところに落語の深さみたいなものが生まれるんだと思います。
・英語落語、字幕付きなど落語の楽しみ方様々
「英語落語家」で検索すると、カナダ人落語家である桂サンシャイン(三輝)さん、大島希巳江(きみえ)さん、幼少期にアメリカ過ごしバイリンガル環境で育ちエール大学を卒業した立川志の春さんをはじめ、数々の落語家さんが出てきます。外国の人が落語を楽しむやり方として、噺家が英語で落語を行う「英語落語」か、噺家さんは日本語を話し「字幕」をつけるというやり方が主流のようです。
よくよく考えると、着物を着て話をする噺家さんから扇子や手拭いといった小道具まで、落語には見た目にも「日本らしさ」が詰まっています。せっかく外国人観光客が増えている昨今、落語のような日本が世界に誇れる伝統文化を積極的に発信すたる提案していきたいですね。
ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota
ライター&プロジェクトプロデューサー
アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。
現在イギリス・カンタベリー在住。
メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。
アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。
⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/