◆外国人が来日する際に求めていること

                                          ボッティング大田朋子

 

 先週イギリスのメディアでは、富士山の撮影スポット「ローソン富士山」に観光客が押し寄せて迷惑行為が後を絶たないことへの対策として富士山を見えないようにする黒幕が設置されたことがニュースになっていました。

 

コロナ後の旅行ブームと円安の後押しを受けて、日本を訪問する外国人観光客が急増しています。海外の人たちにとって日本へ旅行に行くことが「Affordable(手が届く、お手ごろ)」になっていることは前回のコラムでも述べましたが(*)、海外観光客の増加はしばらく続きそうなだけに、ローソン富士山や京都で見られるオーバーツーリズム問題への対策が急がれます。

 

前回コラムはこちら 

それにしても、そもそも日本を訪れる外国人は訪日で何を求めているのでしょうか?

 

近々日本旅行を計画している友達たちに「訪日で楽しみにしていることは?」と聞くと、揃って、「お寺や古い街並みといった伝統や歴史を垣間見ることと、技術やテクノロジーといったモダンジャパンの両方を体験したい」といっていました。そして「日本の美味しい食べ物を堪能したい!」と。

 

すでに訪日経験がある外国人は、「日本の山のある景色や田園風景が美しかったから次は田舎や地方に行ってそれらをもっと見たい。」。ロンドンで開催されるJapan Matsuriに参加したことがある人は、時期が合えば日本で祭りを見たいという声もありました。

 

加えて、以下のようなユニークな回答もありました。

 

・トイレ

これまで日本に行った人たちが口を揃えて日本のトイレの清潔さやキレイさ、しかも公衆トイレでさえウォッシュレットが多く、それでいて無料なことに驚愕しています。「日本ではトイレに行くのさえもワクワクする体験だった」と語っている人が多く、「日本に行ったらトイレで用を足すのさえ楽しみ」といいます。

 

・駅弁

日本を訪れる外国人は訪日での楽しみに「本場の日本食」を挙げます。日本では和食以外のジャンルでもどこで何を食べても美味しいことも知られているのであらゆる食を楽しみたいと。「駅弁を試したい」と言う声もあって、海外からの旅行者の間で駅弁が話題になっているトレンドも見て取れます。

 

・「最古」や「Shinise」が観光のキーワード

SNSの影響で「日本で一番古い」と謳った場所を目にする機会が多いことを受けて、日本を訪れた時に行ってみたい場所に日本最古の場所を挙げる人が多いです。

 

例えば、日本最古の和菓子屋さんである京都市のあぶり餅のお店「一文字屋和輔 一和」や、茨城県にある日本最古の酒蔵「須藤本家」、京都府宇治市にある日本最古のお茶屋さん「「通圓(つうえん)」といったふうに。

他にも世界で一番古い旅館である山梨県の西山温泉にある旅館「慶雲館(けいうんかん)」はギネス認定もされていて海外で知っている人が多い印象です。

 

ちなみに、日本好きのビジネスパーソンなどは「The world's oldest companyはなにか知っているか?」と聞いてきます。実は世界で一番古い企業は日本の会社だそうで、大阪にある建設会社、株式会社金剛組(Kongō Gumi Co., Ltd.)は、聖徳太子が招聘した宮大工が始めた企業で世界で最古の会社だそうです。

それに、伝統と品質、日本らしさの象徴として「Shinise(老舗)」も日本観光のバズワードの一つになっています。

 

・温泉に入る猿

SNSの影響で「温泉に入るサル」の映像を目にしたことがある人もいて、日本に行く際に「Jigokudani Yaen Koen」に行きたいと言う人も。地獄谷野猿公苑で見られる温泉に入るニホンザルといった、日本ならではのものはやはり人気ですね。

 

・買い物

日本に来て楽しむことの一つに買い物をあげる人も多いです。無印やユニクロなどは海外でも店舗があるので買えますが、イギリスではユニクロは高級ブランドとまではいかずとも、日本で感じる「お手軽感」はないので品揃えもよくて割安な日本で店舗に行く人が多い印象。ノンブランドの洋服から小物やアクセサリー、文房具でも日本はかわいいものやオシャレ間ものが手軽な値段で手に入るので買い物も楽しみにしています。SNSで知って「曲げわっぱ」や「つげ櫛」といったものを日本に行った際に買いたいという人もいます。

 

ユニクロ巡り、文房具屋巡り、老舗の店巡りといった日本ならではの買い物ツアーもウケそうです。

 

・アート

日本に来た際に、海外で人気が高いTeam Labの展示会を見に行く人の確立が高いです。また「日本×アート」に興味がある人は、香川県の直島に行ったり、小豆島のART SETOUCHI(瀬戸内国際芸術祭)をねらって(3年に一度開催)来年2025年に日本行きを計画しているケースもあります。

 

・与論島や宮古島でビーチリゾート

与論島や宮古島に行きたいといっている人にも会いました。「日本に行きたい」×「東南アジアの島でビーチリゾートを楽しみたい」とのどちらの夢もかなえられる目的地のようです。SNSでみた「Rabbit Island」(広島県の大久野島)に行ってみたいという人も。

 


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

ブログ https://tomokoota.wordpress.com/