ボッティング大田朋子
日本政府観光局によれば、2024年2月に日本を訪れた外国人の数は278万8千人、新型コロナ感染拡大後の最多を更新して2月単月としても過去最多でした。国別では最も多く日本を訪問した国・地域は韓国、台湾、中国、香港、アジア圏が目立ちます。とはいえイギリスに住む筆者の周りでもこの数年で日本を訪問した人が増えていて、身近な友達だけでも8組います。外国人にとって日本旅行が身近になっているのを実感しています。「一生に一度は日本には行ってみたいけれど、飛行機代や日本の物価を考えると夢のまた夢だわ」と言われていたのが遠い昔のようです。
円安が影響して、海外居住者には日本の物価水準が割安に感じることも訪日を後押ししているといわれます。それでも、韓国や中国からとは違いイギリスから日本に行くにはロンドンー東京の直行便でも14時間はかかるし、航空券だってコロナ直後の2年間に比べれば下がってきているとはいえ、国際線航空券の高騰はまだ続いています。それなのにどうしてわざわざ日本に行くのでしょう?日本を選ぶ理由、そして日本でどこを訪ねたのかなどを聞いてみました。
・筆者が通う歯医者さん(イギリス在住のギリシャ人)は、今まで2回日本を訪れ、来年には再び日本行きを計画しているほど日本好き。「日本は本当に魅力的で独特な国、現代と伝統が見事に共存している」と熱弁します。初めて日本に行った時は2週間の旅行で、1週目は東京と周辺を中心に回り、2週目は関西に向かって京都と大阪、奈良を観光、1泊二日で広島を訪れたそう。2回目の旅行では「もっと日本らしいところを経験したい」と神奈川県の箱根を中心に過ごし、箱根では温泉や富士山の眺め、彫刻の森美術館を楽しんだと言っていました。3回目となる来年の訪日では、地方都市で長く過ごしたいと今計画中です。
・去年の春休みに日本に行ったママ友家族は、ママ(40代後半)が約20年前に英語教師として日本に数年住んでいたので子どもたちを連れて日本を再訪するのが夢だったとおっしゃっていました。コロナが終わってやっと去年実現。久しぶりに訪れた日本での滞在時間は2週間。1週間目はママの昔の友達と再会したり、スキーをしたがる夫の要望で長野県白馬村に行き5日間スキーを楽しみ、2週目は京都と大阪を回ったそう。子どもたちも日本のすべてを楽しんだそうで、夫は「東京で見たTeamLabのBoarderless worldが素晴らしかった!香川県の直島(アートの島として知られる)も行きたかったけど時間がなくて……」とおっしゃっていました。
・息子の学校の先生も3月中旬から婚約者と日本に行く予定で、「桜を見られるといいのになあ」と桜の開花の時期を気にしていました。「わざわざ日本まで行って桜?」と思ってしまいましたが、そういえば友達のご両親(70代)もこの春日本に行きますが(2度目)「満開の桜」を見ることが旅の目的だと話していました。イギリスでは3~4月にイースター休暇があるので春に日本に旅行する人も少なくなく、春に日本を訪れる外国人にとって春の日本といえば桜、そしてお花見をしたいというのはポピュラーなようです。日本での過ごし方を聞くと先生は「禅」をテーマにしたカプセルホテルに泊まるし、友達のご両親は和歌山県の熊野古道の一部のルートを廻る計画があるそうで、日本人である私以上に日本の観光スポットを知っていて感心しちゃいました。
・家族で仲がよい友達家族も2組、コロナ前に日本に旅行しました。小学生の子どもが2人いる友達家族は、3週間日本を観光。東京を観光した後に横浜と鎌倉、そして山梨県に行って富士山を登山、その後関西(京都、奈良、大坂)~中国地方(岡山、広島)を観光したそうです。富士山をのぼったことが家族にとっての旅のハイライトだったとか!日本の移動にはジャパン・レール・パスを使ったと言っていました。
・中校生二人と小学生の男の子を持つ5人家族の友達ファミリーは、日本食と日本の文化が大好きなパパと日本の文房具のファンという次男の熱望で家族旅行が日本に決定。次男は日本滞在中に文房具屋さんを回って色々な文房具を買ったことが、マーシャルアート(忍術)を習っている長男は日本で「日本刀」を自分へのお土産として買ったと言っていました。ママは京都で着物レンタルの着付けを経験、東京では家族で料理教室に参加して餃子を手作りしたそう。大好きな日本料理を自分で作る経験が素晴らしかったのでイギリスに戻ってからも日本料理のレッスンをオンラインで受講してうどんやお好み焼きが作れるようになったとか!
・去年の夏韓国に住む家族を訪ねたついでに、17歳の娘と日本に行ったという韓国出身の友達(50代前半)は関空に到着し、京都と大坂でお寺巡りと温泉を楽しんで石川県に向かい金沢で一泊二日。世界遺産の白川郷荻町合掌造り集落、飛騨大鍾乳洞を見て、岐阜県の高山で温泉につかったとのことでした。岐阜県に行った理由を聞くと、日本にはすでに何度も来たことがあって東京を始めとする有名都市には行ったことがあるので、今回は「日本らしいところ」を探し、夏でも比較的涼しいと聞いた岐阜県に行ったとのこと。その前に日本に来たときは和歌山県にある高野山に行ったそうで、高野山の宿坊寺院に泊まって精進料理を堪能したことが忘れられないとおっしゃっていました。イギリスに住んでいるとはいえ家族がいる韓国に戻ったついでに何度も日本を訪日しているだけあって、日本の地方に足を延ばしている様子が伺えます。
・香港出身で母親と子どもたち(40代後半、高校生と小学生の娘二人)はイギリス在住、父親は香港で仕事をしている友達家族は年2回香港に帰り、その度に香港から日本を訪れています。娘たちもとにかく日本のものが好きで日本に行くとキャラクターグッズを、ママは化粧品を買い込むそう。家族みんな温泉が大好き!何度も日本に行っているだけあって観光地を回るために予定を詰めるより、買い物をして食事と温泉を楽しんでというリラックススタイルです。
日本を訪問した友達たちの話を聞いていると、イギリスから行く場合は首都圏の空港に到着するパターンが圧倒的多数なので、東京と周辺都市を見物、そこから京都や大阪に向かうというのが基本ルートで、そこに富士山や金沢、高山、白川郷や箱根を組み合わせて日本らしさを満喫している印象です。
去年夏の帰国時に四国を旅行したときに、四国の主な観光スポットでたくさんの外国人観光客(ほぼ中国人)を見て驚きましたが、イギリスから訪日する筆者の友達の滞在期間が約2週間ほどなので、時間的な制約もあって一回目の日本滞在では四国まで足を延ばしたり、九州に行ったことがある人はまだいませんでした。日本を訪れる回数が2回、3回と増えてくると地方都市の魅力を発見する旅になってくるんでしょうね。このままいくと数年後には、九州や東北などの地方の魅力を日本人よりも知っている外国人に出会うことも増えてきそうです。
ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota
ライター&プロジェクトプロデューサー
アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。
現在イギリス・カンタベリー在住。
メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。
アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。
⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/