◆第33回「おひとりさまという時間の大切さ」

北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。第33回は「おひとりさまという時間の大切さ」の話です。

========================================

 

カナダでは9月が新学期のスタート。あれから1ヵ月ほどが経って、わが家もやっと新しい生活リズムに慣れてきた。正直なところ、心身ともにおつかれ気味(笑)。

 

今期から子どもの学校開始時間が変更になって、これまでよりも1時間早く起きなければならなくなった。でも学校にいる時間は同じなので、迎えの時間が早くなる。加えて、子どもがモーレツに拒否をしているので、今のところわが家では延長保育を利用していない。

 

つまり親側としては、睡眠時間が減り、子どもとのアクティビティの時間がさらに増えたという状態。誤解を招きたくないのであえて伝えさせていただくと、大前提として「子どもと一緒にいられる時間はしあわせ」。そう、うれしいのだ。

 

子はいつか巣立つ。ティーンネイジャになれば、もう、ママー!と駆け寄ってすりすりしてはくれないし、「ずっと一緒にいたい……!」とハグをしてくれることもなくなる。だから、今のこの時期というのは、ほんとうに貴重な時間だ。

 

でも、家事をして、仕事をして、育児をして、学校関連の対応をする、というこのマルチタスクの波が日々押し寄せてくる毎日にだいぶ疲弊している。そして、体力もついてこなくなってきている。

 

そんな中で先月子どもが生まれてから、お初!での「おひとりさま時間」が訪れた。義理の両親が遠方に住む娘家族に、ロングウィークエンドを利用して会いに行くという。子どももいとこと一緒に遊べるし、とのことでわが家にもお誘いが入ったのだ。

 

これまで義理家族からの誘いには、体調が悪いとき以外は積極的に参加していた。カナダ人なので ”家族の集まりは絶対参加” という圧はなく、「気が乗らないときは来なくても大丈夫よー」、と言われてはいたけど、夫の家族はほんとうに仲が良くて、家族イベントは全員がよろこんで参加となるので、わたしもそれにならっていた。

 

でも今回ばかりは、休息がほしい……!と心から願っていたので、初めてお断りをした。実は、わたしは結婚をして海外移住をしてからというもの、カナダで1人夜を過ごしたことがなかった。なので、昼間はいいけど、寝るときにきっと寂しくなったり、戸締りが気になって落ち着かないかもしれない、と少し不安もあった。

 

さて、初の3日間のおひとりさま時間。実際にはどうだったかというと、控えめに言って最高!だった……(笑)なんなら、あと1週間はいけると思ったくらいだ。懸念していた夜の時間もなんのその。誰かの動く音や寝息、振動に邪魔さずに、まさに大の字になってぐっすり眠ることのすばらしさを久しぶりに体感した。むくみなんかも癒えてすっきりの目覚め!

 

せっかくの1人時間なのだから「やらなければならないこと」と「やりたくないこと」をするのは一切やめようと決め、「今やりたいこと」だけをして過ごした3日間。自分の時間をフルに使えて、誰のことも気にせずに外出もできる。食事だって、なんなら栄養バランスも気にせずに好きなものを食べればいい。独身のころにはあたりまえだった、こういう時間がこんなにもしあわせなことだったなんて……。

 

不思議な感覚だけれども、パッと何かを抜けたかのような、本来のじぶんに戻ったような気分になったのだ。わが家は夫は家事・育児に積極的だけども、わたしの性格上、特に子どもができてからは、まずは子ども第一。次に夫や家族のこと、最後に自分と、「わたし自身がどうしたいか?」を無意識に後回しにしてきたツケが溜まっていたのかなと思った。

 

そこに新学期の新スケジュールが追い討ちをかけて、疲れ切っていたのかもしれないなと。ストレスの種類は、人によるのかもしないけれど、わたしにとっては「何かをするときに、自分の都合だけですぐに行動ができる」というのは、ほんとうに気持ちのいいものだった。

 

やっぱりママであれ、妻であれど、「わたしの時間」というのは人生において大切だと改めて実感した。海外の女性はそういう時間をうまく取り入れているけれど、そんな文化圏に住んでいながらも、わたしはすっかり日本式であったなあと気づいた。とてもいい時間だった。

 

========================================

SASAKI 

海外移住をきっかけに本格的に編集者・ライターになる。取材・インタビュー記事が得意。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育て、教育に興味あり。現地企業では新たな挑戦としてマーケティング・カウンセラーも経験し、いつか海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。