◆第36回「ささやかだけれど、大きな改革」

 北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。

第36回は「ささやかだけれど、大きな改革」の話です。

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 今年は暑くなるのが早い。わたしの記憶では、5月下旬ならこの地域は日本でいう春の陽気だったはず。でもここ数週間の気温は、アップダウンはあれど、30度超えする日も何日かあった。

 

これがいわゆる温暖化なのか……と未来が少し怖くなる。ゴミの分別、生ゴミはコンポスト、プラスチックは控える、エコバック、シャンプーや石鹸、美容系はプラントベースなどなど、日常でできることは少しづつやっているけども、そんな小さな積み重ねではどうにもならないフェーズにいる

のではないかな、と近年の気候を見ていると思ってしまったりする。

 

さて海外ではヨーロッパを皮切りに、北米でもコロナ予防の緩和が進んでいて、国内外の往来はもちろん、ワクチンの有無によってはPCR検査による陰性証明も不要となった。日本はまだ陰性証明書が必要だったり、観光のための入国にはビザが必要だったりと(5月下旬時点)、いつも通り慎重であるけれど、こちらはなんだかコロナ前の日常生活が戻ったようだ。

 

ずーっとマスク生活をしてきた日々から、先日は久しぶりにマスク無しでショッピングモール内をうろついた。日本人にとってマスクは慣れているものだけれど、それでも、スッと、開放感のようなものを感じてうれしかった。

 

暖かい春が来て、マスクが取れて、と少しづつ身も心も軽くなって来ている最近、わたしはあることを実践している。

 

それは、”わたし”をできるだけ大切にすること。

 

わたしは海外移住をしてこちらに義理家族ができてから、そして子どもが生まれてからの10年ほど、何かをするときの優先順位として”わたし”を一番最後にしてきた。(結婚や子育てをしている人なら、わたしも同じ、と思う方も多いのでは?)

 

それは誰かに言われたからではなく、なんというか、嫁とは、母とはという固定概念の中で勝手に”そういうもんだ”としてきてしまっただけなのだけど......  ”わたし”はどうしたいのか?ではなく、家族にとっての居心地のよさや、喜びを一番最初に考えてきた。

 

家族が幸せなら、わたしも幸せ。

 

そう信じてきたけども、それはどうやら違ったようで。この10年の間、知らず知らずに自分を置き去りにしてきたことで、わたしは自分がどうしたらハッピーなのかがわからなくなり、不満が出るようになってしまった。

 

もちろんそれはとても些細なことで、例えば「休日はゆっくりしたいけれど、家族の集まりがあるから出かける」「疲れているけれど、子どもが友達と遊びたいと言うからプレイデートをセッティングする」「〇〇を食べたいけれど、家族が好きじゃないからやめとこう」そんなものだ。

 

でも、結果わたしは「そろそろわたしの人生を取り戻したい」と思うようになってしまったのだ。これにはわたしの性格もあいまっているのかもしれない。そもそも一人旅で海外を十数か国周る人間だ。内助の功タイプではないのだろう。また、ここ数年身内の他界が増えていることも理由の一つ

かもしれない。

 

人生っていつまで続くかわからない、わたしも人生を楽しみたい。そう心底感じたのだ。

 

だから今は、”わたし時間”を大切にするために、家族行事を断って週末に一人時間を作ったり、自分が食べたいものを優先して食べるなど、少しづつだけど実行している。家族たちは「あれ?」とうすうす変化を感じているようだけど、幸いまだ文句は言われていないので、もしかしたら彼らにとってはそこまで大きな変化ではないのかもしれない。

 

でもわたしにとっては、自分を後回しにする、いつものクセを意識して軌道修正するぐらいには、大きな変化なのだ。妻であり、母であり、わたしである。そういうふうに生きていきたいなあと、この頃は切に思っている。

 

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SASAKI

海外移住をした編集者・ライター。取材・インタビュー記事が得意。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育て、教育に興味あり。現地企業では新たな挑戦としてマーケティング・カウンセラーも経験し、いつか海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。