◆コロナ禍のイギリス 6月レポート18歳以上まで接種が進む新型コロナワクチン

 

                                                                                                                                                                                                             ボッティング大田 朋子

 

去年の12月以降、80歳以上の高齢者や介護施設で働く人たち、基礎疾患を持つ人たちを優先しながら年齢順に進められてきた英国の新型コロナワクチン接種プログラム。6月にはワクチン接種枠が18歳以上まで広がり、今では英国に住む成人全員(18歳以上)がワクチン接種に招待されている。

「18歳以上の大人に対して一回目のワクチン接種を7月末までに完了させる」との当初の目標達成に向けてラストスパートに入っている。

【参照:筆者の1回目ワクチン接種体験談 https://bit.ly/3zZoYWD 】

 

・ウォークインのワクチンクリニックや週末のポップアップワクチン会場が出現

感染力がさらに強いといわれるインド発の「デルタ株」が流行し、ここにきて再び感染が拡大してきたイギリス。「2回ワクチンを接種すればデルタ株に対しても9割以上の確率で重症化を防げる」と言われ、とにもかくにも「ワクチン接種を迅速に進めよう」との動きがさらに加速している。

 

デルタ株への対応として今月はワクチン会場の数がさらに増えた。平日の10時から17時に予約なしで行ける「ウォークイン・ワクチンクリニック」も始まったし、週末に場所を変えて集団接種するポップアップのワクチン接種会場も始まった。

 

先週末は朝8時半から夜7時まで予約なしにワクチンを接種できるポップアップのワクチン接種センターがうちの近所にもできて、まだワクチン未接種の大学生や2回目接種を待っていた人などが朝から利用していた。筆者も1回目のワクチン接種からすでに8週間以上が経過したので、「せっかくだから」と近所のポップアップワクチン近場で2回目を接種しようと目論んだのだが、そこで扱うワクチンはファイザー製だったので断念(アストロゼネカ製を接種済み)、当初の予約通り1週間後に予約しているワクチンセンターに接種しに行くことにしたが、ファイザー製の2回目ワクチン接種待ちだった友達(40代始め)は早速打ちに行っていた。

 

ワクチンの是非は置いといて、接種を望む人たちにより接種がしやすい機会が与えられていることは、今のイギリスのコロナ過を抜け出す政策としては適切かと思う。

 

・常に自主隔離の不安と隣り合わせの子どもたち

2回目のワクチン接種を終えた大人たちが徐々に通常の生活を取り戻しているのとは対照的に、就学中の子どもたちは常に「いつ自主隔離になるかわからない」不安と対峙している。

 

うちの子どもたちも例外ではなく、小6の息子は今学期だけで2回、10日間の自主隔離を経験。学年の一人(生徒)が陽性だったため学年全員が隔離対象になったのだ。とはいえ、陽性者が出たとわかった時点ですぐ学年の子どもとスタッフ全員対象に学校でPCR検査が行われたので、翌日の夕方には自分の子どもは陰性だとわかったのに、10日も隔離をしなければならない現在の政策にはさすがに腹が立ったし、見直しが必要なのではと疑問に思った。

 

自主隔離中は再び授業がオンラインになったが、ちょうど一年前の1学期間(4~7月)、今年の冬(1月から3月)とすでに何度もオンライン授業をした後だけに、再びオンラインで勉強しろとなってもモチベーション維持が難しい。学習の四分五裂が続く現状や、子どもたちのメンタルヘルスを本気で心配している。

 

今一番子どもたちに必要なことは友達と会うといった社会的なことだし、カリキュラムの点からいってもオンライン学校では十分に(またはほとんど)できなかったスポーツや演劇といった科目を取り戻すこと。基幹科目以外の芸術やスポーツ教科や、人との交流機会の不足といった点が非常に気がかりだ。

 

・子どもたちの学習機会を守る

6月政府発表の公式データでは英国の小学生の2.7%、中学生の4.2%がコロナ関係の理由で学校を欠席している。感染したケースや濃厚接触者なら仕方がないが、PCR検査をして陰性であっても陽性者と同じ学年だからという理由で10日間学校に行けない子どもの数が多すぎる点が気になる。

 

「PCR検査を5日目にして陰性だったら教室授業に戻れる」といったコロナ感染を押さえながらも子どもの学習機会を止めない方向で対応を更新してほしいと切に望む。コロナとのつきあいが長引く今、子どもたちの学習機会を守ることに本気になってほしいとイギリス政府にお願いしたい気持ちだ。

 

・学年が上がるほど増える自主隔離地獄

英国では7年生(中学生、11歳)以上の子どもたちは、週に2回無料で配布されている「ラテラルフロー」と呼ばれる検査を行うことになっている(自宅で出来て約30分で結果が出る)。

 

コロナ検査キットは無償で提供されるのでわが家でもパックがあり、人込みを歩いた翌日や体調がすぐれないときなど少しでも不安だなと思えばいつでも検査ができるのはありがたいのだが、同時にコロナテストが進むほど陽性者を発見するので学校閉鎖が増えるジレンマも感じている。コロナ検査がいつでもできるおかげで早期発見はできるが、先ほどの話とも重なるが、世の中の3分の2の大人がすでにワクチンを接種していて、子どもたちは重症化しないのであれば、子どもたちの日常生活を続けながらどう感染拡大を押さえていくかに焦点を移して対策を講じてほしいと切に願っている。

 

・6月21日ロックダウン緩和延期

イギリス政府が当初発表していたロックダウン段階解除のロードマップでは、6月21日にロックダウン全面解除を目指していたが、ロックダウン解除は延長。これまで順調にロックダウンでの制約を段階的に緩和していたイギリスだったが、ここにきてデルタ株の脅威が浮き彫りになり、ロックダウン全面解除が4週間延長された。今は、次に設定されたロックダウン全面解除想定日である7月19日に向けて、デルタ株の拡大とワクチン接種とが競争しあっている恰好だ。

 

かくいう筆者はこれを執筆している数日後に2回目のワクチン接種を控えている。2回目のワクチン接種を終えて免疫が働くと言われる2週間の期間を置いたら、夏休みは日本にいる家族に1年半ぶりに子どもを連れて会いに行きたいと切望しているのだが……。 ホテルでの自主隔離が6日とあって、色々思う所がある今日この頃なのだった。

できることとやるべきことをきちんとして、淡々と状況を見守るしかない。 

 


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

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