◆今日から始めるNFT

 

前回はデジタルデータを資産として所有できる時代の先駆者として「ノン・ファンジブル・トークン(以下NFT)」を紹介し、NFTをアートに活用した例を取り上げた。仮想通貨さえ準備すればいつでもNFT市場に参加できるのだから、NFTが遠い未来の話でも大きな会社だけに限った話ではないという話だった。

 

今までは「複製できる」特性が仇となり、資産としての価値を持てなかったデジタルデータが「ブロックチェーン」の技術によって求めていない複製を禁止できるようになったおかげで、デジタルの世界に「本物」や「オリジナル」といった概念が入ってきたのだ。これがもたらす変化や新しい価値・ビジネスの創造は計り知れない。

【記事参照】;https://www.kawaii-academy.com/main/%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E7%A6%8D%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9-3%E6%9C%88%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88/

 

・案外手近なNFT

とはいえ、多くの人にとって「NFT」はまだどこか他人ごとに思えるのではないだろうか。私の場合は、NFTを考えるとき、祖母から譲り受けた真珠やダイアモンドなどについている鑑定書を思いだすようにしている。今はコピーしまくりのデジタルデータがNFTの技術を使うことで、今後は鑑定書付きの宝石のように扱われるとイメージしている。NFT化されたデータを見たときは「このデータに鑑定書がついてくる」という視点で眺め、NFT化されたデータの価値を想像している。

 

それでも真珠やダイアモンドとは違い、検索して出てくるNFT作品を見ても特に魅力を感じないことが多いし(注意;鑑識眼がないともいえる!)デジタル上で所有するものに大金を払う概念がまだ自分のものになっていなかったりしている。

 

けれど同時にNFTが世界を変えていく可能性を秘めているのもうなずける。そんなことを思っていた矢先、「NFTの概念や価値を頭で理解し納得するのは難しいが、自分の作品をNFT化して販売し始めるのは意外と簡単だ」と耳にした。というわけで今回は、「自分がNFTを始めるにはどうすればよいだろう」という視点に立って、素人が手持ちのものをNFT化して成功した例を紹介しながらNFTの面白さや可能性について考えたい。

 

・写真×NFT

「NFTに参入するとしたら」と想定したとき、一番始めに浮かぶ案として「NFT写真」を浮かぶのは私だけではないだろう。普段から絵を描いたり作品を作っている人は別だが、芸術的な活動に勤しんでいない人からすれば、アート系よりも「NFT写真」の方が参入障壁は低めに映る。筆者同様スマホで毎日何かしらの写真を撮っていたり、スマホには過去の取りだめ写真がたくさんある人も多いだろうから写真をNFT化して販売するというのは手軽でハードルが低く感じる。

というわけで、ノンプロが撮った写真をNFTとして販売した二例を紹介したい。

 

・自分で撮った写真をNFT化して販売

プロでも何でもない素人が自分で撮った写真をNFT化して販売し成功した例としてまず挙げたいのは、インドネシアの大学生の自撮り1,000枚コレクション。「自撮り写真なんて買う人がいるのか?」と疑ってしまうが、それがいるのである。

今年始め、インドネシアの大学生が5年間毎日パソコンに向かう自分自身の姿を撮った自撮りの1,000枚をNFT化した作品が、1億円以上売り上げたのだ。

検索してその自撮り写真を見てもらえばわかるが、作品は大学でコンピューターサイエンスを学ぶ男子学生が、毎日PCの前に座る自分を撮影しただけのもの。学生の容姿がモデル的要素を秘めている訳でもないし、撮影に何か工夫がされているだけでもない。しかしその何てことない写真をある有名シェフが購入しSNSで紹介したのをきっかけに価値が爆上がりし、それから数日間で400人以上がこのインドネシア学生の自撮り写真の所有権を購入したのだ。

 

自撮り写真をNFT化して販売した本人が、「大学を卒業する記念でタイムラプス動画を作成するつもりだっただけ」と言っている通り、何度見ても全くもって特徴のない写真だけに何故高値がついたのか謎なのだが、事の成り行きを説明すると、この学生、大学でブロックチェーン技術について学んだことをきっかけに撮りためていた写真を3ドル(約340円)と低価格に設定して販売した。NFT化することでお金を稼ごうだとかビジネスにつなげたいなどの意図は全くなく、それを見た有名シェフが写真を購入して自身のソーシャルメディアで紹介したことで売り上げが急増、結果合計して100万ドル(約1億1400万円)もの売上を上げてしまったのだ。つまり、何がどう転ぶかよくわからない! 

 

このインドネシアの学生の例に続き、日本でも昼食を食べている自分の姿を2年間撮影していた「昼食と自撮り画像」のコレクション688枚をNFT化して販売した「いただきますマン」が出現し、大成功をおさめた。これもなんてことないランチと自撮り画像のコレクションに過ぎないのだが、Twitterで話題になり出品と同時に即売した。

 

上記の二例のように、販売されているNFT写真を見ても「誰が何のために大金を払うのか」と感じる作品も正直少なくない。けれど一定のものを継続して撮影しまとめることで作品となるなど、今までにはないコンセプトで売買されているのは間違いなく、売買の世界に新しいジャンルを創造し始めているともいえる。

 

・未知数のNFT世界

素人考えながら、「あの自撮りに高額がつくなら、毎日撮っている夕食の写真や、ジョギングついでに撮っている近所の観光名所の写真のストックなんかはNFT化したら売れるかも!?」なんて思ってしまうが、とにかく写真とNFTの相性は非常に良さそうである。

 

「今はまだ参入している数が少ないのでチャンス!」と先行者利益を煽られると、そろそろ始めてみようかと時期を伺っている人も少なくないだろうし、実際チャンスなのかもしれない。

 

ただ、まだNFTの世界はまだ法整備がされていない領域だけに、公共のものを撮影している場合は肖像権や著作権に考慮して権利侵害を防ぐことが必須だし、自撮りに関しては自分の写真を他人がずっと持ち続けるという結果を軽く考えずに、長期的視点と自己責任感を持ってNFTを活用した世界に参加していきたい。

 

 

NFTがもたらす変化がどこまで大規模なものかは未知数だが、今後のビジネスチャンスを多大に秘めていることは間違いないのだから。

 


ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota

ライター&プロジェクトプロデューサー

 

アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。

現在イギリス・カンタベリー在住。

 

メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。

アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。

 ⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/

 

ブログ https://tomokoota.wordpress.com/