◆第39回「大切な癒しの時間」

 北米でマルチリンガルの子育て、仕事、海外生活と日々奮闘中の筆者が感じた日本と海外の違いや気づきを綴るコラム。

第39回は「大切な癒しの時間」の話です。

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ああー癒されたい。そう思ったとき、皆さんはどこに行きますか。 

 

日本ではお篭り場所として、ラグジュアリーなホテル滞在が人気だと知人から聞いた。私もキレイ でお洒落なホテルは大好きだけれど、こと海外においては、よほどの価格を出さない限り 「おぉー!」と思うような体験はできないので、手軽にという点においてカナダでこの選択肢はな い。 

 

そもそも海外のサービスは日本のそれと比べると、期待はずれになることが多い気がする。(もち ろん最高級の場所は別格。でも庶民が奮発していく場所にはあまりない印象) 

 

私はといえば、年を重ねるごとに自然に触れたい気持ちが大きくなってきていて、癒されたい、集 中したいと思うと、ここ数年は定期的に大自然の中に行きたくなる。 

 

幸いなことにカナダは自然に恵まれた土地なので、車を1〜2時間も走らせれば、「THE森の中」 のような場所に気軽にいくことができる。先日も無性に自然を欲したので、山の中に仕事をかね て行ってきた。 

 

選んだのは、寝袋やテントなどを準備せずにキャンプが楽しめる「グランピング」ができる場所。 調べると、グランピングはグラマラスなキャンプの造語とのことで、ネットにはお洒落でステキな内 装の写真が並んでいた。 

 

私が予約をした場所のHPの写真もとてもステキで、期待はMAX。キャンプで食べるBBQ用の食 材やチーズ、ワイン、焚き火に欠かせないマシュマロなんかを持って出かけた。 

 

ほどよく人の気配を感じるけども、顔を認識することはできない距離感で大自然の澄んだ空気を めいいっぱいに楽しみながら、黙々と仕事を片付ける。いつもなら余計な音は一切遮断したいの だけれど、森の中で聞く、草木が鳴らすサワサワとした音や小鳥のさえずりは、まったく邪魔には ならず心が洗われる気さえした。(よほど疲れていたのだろう…笑) 

 

仕事がひと段落したら、森の中を散歩しに行って、日が暮れてきたらワインを開けて焚き火の準 備。パチパチという音をボーッと眺めて、小腹が空いてきたら野菜を切って肉を焼く。 

 

普段ならスキマ時間にネットサーフィンやSNSを見てしまうのだけれど、ネットが入りにくい環境 だったので見ることができず(あえて遮断しているのかもしれない)、良いデジタルデトックスの機 会になった。 

 

仕事をして、散歩をして、3食のごはんの準備をしているだけなのに、ヒマだと思うことは一切なく て、気がつけば日が暮れている。夜は室内でカードゲームでもしようといろいろ持参したけれど、 結局一度も遊ばないまま、ただただ寝る直前まで火を焚いて、それを眺めて、話をして過ごした。 

 

これまでも別荘を借りたり、自然が近くにあるホテルに滞在したことはあったけど、これほどまで に自然を味わって、心穏やかに過ごせたのは初めてかもしれない。 

 

カナダの秋はとても短くて、すぐに冬がやってくる。その前にもう何回かはこの贅沢を楽しみたい なあと思いながら家路に着いた。

 

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SASAKI 

海外移住をした編集者・ライター。取材・インタビュー記事が得意。英仏話者。人々の生き方や働き方、子育て、教育に興味あり。現地企業では新たな挑戦としてマーケティング・カウンセラーも経験し、いつか海外と日本の架け橋となるようなサポートもしてみたいと考えている。