ボッティング大田 朋子
・水際対策緩和、ホテル隔離の期間が短縮
先月のコラムでは筆者が7月中旬、イギリスから日本に入国し6日間のホテル強制隔離体験を共有したが、外国に住む多くの日本人が予測していた通り、オリンピックが終了した矢先、水際対策は緩和された。
【参照:ホテル隔離体験談 https://bit.ly/38lI2BB】
イギリスの場合は、オリンピック終了から3日後の8月11日、「8月14日午前0時以降イギリスから帰国、入国する人たちに対してのホテル隔離期間を6日間から3日間に変更する」と発表された。つまり、今イギリスから日本に行くと政府が指定する宿泊施設に3日間滞在(入国日を0日目として計算)、そして3日目の検査で陰性であれば宿泊施設から退去できることになった。
ホテル隔離の期間が短縮されたことは在外日本人にとって非常に望ましいことだし、わたしはオリンピックでの各国選手に多大なる感動をいただいた一人だが、この時期のオリンピック開催の是非はともかく、過去数か月の日本政府の水際対策では、オリンピック開催だけに焦点を当てて、日本にいる家族に会いたいと切望している多くの日本人の思いを置き去りにした感は否めなかった。オリンピック開催はコロナが起こる前に決まっていたことだし、オリンピックを中止なり延期できる権利はIOCが持っていて、日本政府だけに非があるわけではないとわかっていながらも、多くの日本人の思いを置き去りにした日本政府の昨今の水際対策は非常に残念だった。
海外渡航の前後に何度か経験するコロナ検査キット
・今、海外渡航に必要な手続き
夏休みを日本で過ごしイギリスに戻ってきた筆者だが、ここで日本からイギリスへの渡航に必要だった手続きに触れたい。
まず海外渡航する72時間前にコロナ検査を受ける必要があるが、イギリス向けの「海外渡航証明書」を発行してくれるコロナ検査機関を探すことから始まる。幸い、オンライン診察で渡航前検査ができることがわかり出発前の遠出を避けることができたが、値段は一人数万円もしたし、オリンピック/パラリンピック開催に伴って郵便サービスに遅延が生じる可能性があると言われ、自宅で検査をしたキットが予定通り検査機関に配達されるかとハラハラドキドキだった。検査キットの到着が遅れると出発時に提示が必要な陰性証明書をもらうことができない、そうなると搭乗できない……!
胃がキリキリする日が続いた。
イギリスに到着後は到着翌日から数えて2日目にコロナ検査が必要で、そのコロナ検査キットは渡航前に購入しないといけない。イギリス行きのフライトに乗る42時間前をきると、渡航後の滞在先などをオンラインでイギリス政府に提出しないといけないが、その時に渡航後に受けるコロナ検査の予約番号を提示しないといけないからだ。加えて、ワクチン接種が2回とも済んでいることを証明する書類(NHS Covid Pass)を発行してもらう手続きも必要。というわけで、日本にいる間も、イギリスに無事帰るための準備がけっこう大変で神経を使った。
コロナが早く収拾して、自由に海外渡航ができる日が本当に待ち遠しい。
・コロナ感染拡大中の学校の対応、イギリスと日本の違い
日本では8月末、増え続ける感染者と医療機関がひっ迫しているなかで子どもたちは新学期を迎えた。大坂に住む友達の子どもが通う学校では、「オンラインで授業を受ける」か「登校する」を選べるといっていた。毎朝、検温結果と子どもの体調をネットで学校に報告するが、その際その日はどのように授業に参加するかを学校に通知するとのことだ。
ロックダウンを繰り返し、去年度は本来の半分の時間しか登校せずに終わったイギリスの子供たちを見た後では、日本のやり方だと少なくとも保護者が「コロナへの感染リスク」と「対面授業(社会的交流)」のどちらを重んじるか判断できる点をうらやましく思った。同時に、共働き家庭やひとり親世帯にとっては、行政が明確に指示を出してくれた方が周りの理解が得られて仕事上の都合がつきやすいのではとも思う。個人に判断が委ねられることでかえって無理をしている保護者もいるのでは、と気になる。
・子どもたちは9月から新年度スタート
イギリスでは9月から新学年が始まる。子供たちをデルタ株からどう守るかはイギリスでも大きな課題。中学生以上は、新学年が始まる前に学校でコロナ検査を受け、陰性であることを確認してから登校することになっている。中学生には30分で結果がわかるラテラルフローテストが配られるので、毎週二回コロナ検査を自宅で実施することで早期発見し、子どもたちの間でコロナの感染拡大を防ごうとしている。
今のイギリス社会では、ワクチン未接種の子どもたちの間でコロナのアウトブレイクを起こしてはいけないという緊張感と同時に、デルタ株の感染者数は相変わらず増えているとはいえ死者数や病院の重症患者の数は大幅に減っていることへのリラックスムードもある。
ちなみに、現在イギリスでは16歳以上の88%が1回目のワクチンを接種済み、77.4%が2回目のワクチンを接種済み。リラックスムードが裏目に出ないことを祈るばかりだ。
・学校の対策の変化
新学年が始まるにあたりイギリスの学校のコロナ対策で一番変わった点は、陽性者が出た場合の対応だ。前学期までは学年に一人でも陽性者が出たら、他の子どもたちのコロナ検査の結果が陰性であっても学年全員が10日間自主隔離をしなければならなかったが、これからは濃厚接触者でも検査をして陰性であれば、隔離なしでそのまま学校生活を続けられるようになった。
去年息子が6年生のときは、学年で陽性者が出たことが二回あり、その度に自主隔離を余儀なくされた苦い経験があるので、この政策は大歓迎だ。前学期までは、学校の誰かが感染したらまた10日間登校できないし、誰にも会えなくなるといった不安と対峙していた。これからは子どもの学習機会を必要以上に止めずにすむと、少しほっとしている。
ボッティング大田 朋子 Tomoko Botting-Ota
ライター&プロジェクトプロデューサー
アメリカ→ドイツ→インド→メキシコ→アルゼンチン→(数か月ばかりの英国滞在)を経て、2011年秋スペインへ移住。
現在イギリス・カンタベリー在住。
メキシコでオーガニック商品の輸出会社立ち上げ+運営。
アルゼンチンのブエノスアイレスでマンガの国際著作権エージェント立ち上げスペイン語出版。
⇒プロフィールはこちら https://tomokoota.wordpress.com/about/